フランス プロヴァンス地方の霧の立ち込める山頂の街から少し離れた場所
現在は,ル・トロネ修道院の前身でありつつも,人の手が離れ,身廊のみを残し朽ちてしまった状態のフロリエル修道院が残る。そこからフロリエル修道院にあったであろう回廊を元に設計する。
垂直水平で構成する新しい回廊によって身廊ごと囲い、自然とのコントラストをつくり。それによって周囲との空間から切り離された聖域を作り出す。
その中にできる普段人の立ち入らないようにした中庭には、朽ち行く修道院と成長していく植物の中で時の流れを感じる場となる。
回廊のボリュームは同一平面上に配置しているが、回廊を進むとアップダウンを繰り返す床や、光を操作する壁、山の中に入り込む構成で様々な祈りの空間を形成している。
回廊を巡るにつれ、中庭に守られた修道院との距離が変化するため、見え隠れする景色と流れる霧によって時の流れを演出する。
様々な祈りの空間と多角的な居場所を提供するために、壁に囲まれた一人スケールの空間,数人で広々と自由な利用ができる空間,一人か二人が通れる,細く繋がる空間,歩くも留まるも祈るも表現の自由な空間などを構成した5つのパターンに対して疎密を持って配置を行う。
川の流れに沿って回廊内に霧が流れ込むことで、見え隠れする回廊を人々は、小道から発見し、回廊に誘われるように歩き回る。その中で修道院と共に時を過ごした中庭がフロリエル修道院と回廊を繋ぎ、進む内に回廊はフロリエル修道院に近づき、聖なる空間を感じつつ、人々は歩く回廊と留まる回廊が交わる空間に進む。それによって人々は自分の状態にあった空間に身を預ける。さらに回廊を進み、山に入り込むことで、より一層静かに祈りを捧げる空間に身を置く。しばらくその場に留まった後さらに進み、山から抜けた回廊で人々は、光が霧や周囲に反射することによって、心は晴やかになっていく。このように様々な特徴を持った祈りの空間を巡り、神秘的な体験をしては、また外の世界に戻っていくという物語を通して、この場所から人々が何かを生み出す新たな生産の地として発展していくと考えている。
制作者:内野佳音
honors and awards
日本大学生産工学部卒業設計審査会 桜建賞/1位・日本大学校友会設計賞
第33回千葉県建築学生賞 2位/優秀賞
JIA 全国学生卒業設計コンクール20選
歴史的空間再編コンペティション2021 30選
歴史的空間再編コンペティション2022 30選